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<  都城子ども療育センター「ひかり園」について  >


                           泣iカオアーキオフィス
                          代表取締役 中尾 耕二

 「ひかり園」は、発達に障害の疑いのある幼児を対象とした障害児通園事業
を、昭和55年から先駆的に行なってきた施設です。学齢前の子ども、特に障
害の有無の判断が難しい1歳から3歳までの超早期と言われる子どもたちをも
受け入れの対象とする事を大きな特徴としていました。平成10年からは、新
たに重度の障害を抱える学童から成人までを対象にした重症心身障害児(者)通
園事業(以下重心事業)も始めましたが、建物の老朽化に加え、重心事業に必
要な設備や空間が不十分で、動きの激しい障害児通園事業と空間を共用するこ
とも危険を伴うため、今回の全面建て替えを計画するに至りました。        
 ひかり園の建設時点では、「発達障害者支援法」など話も無い状態で、国や
地方公共団体からの建設費の助成は一切受けられませんでしたが、幸いにして
ひかり園の長年の功績が日本財団に認められ、平成15年度の助成対象に選ば
れ、建設が実現することとなりました。                                  
 「発達障害者支援法」が成立した現在においても、発達支援センターの新築
例は、まだ殆ど無く、その意味で、ひかり園は、発達支援センターの機能を完
備した数少ない新築例として、広く伝えるべき重要な建物と考えております。

 建て替え計画にあたり、最も注意を払ったのは、空間構成です。この建物の
第一の特徴は、廊下、玄関、中庭、外部歩路等が、保育室の一部として、連続
的、重層的に機能するよう計画されている点です。自閉症や多動症の子どもた
ちは、集団行動に極度なストレスを感じるケースが多く、そのストレスからの
回避が、一般的に問題行動と受け取られます。今回の計画では、建築的に「逃
げ場」を設けることにより、ストレスを和らげ、療育に役立てることを意図し
ました。例えば、朝、登園してきた子どもたちは、母親以外の他者を避け、保
育室の隅に行きたがります。プログラムが始まり、徐々に中心へと集まり、そ
の輪が自然に狭められて行く事が理想と考えました。計画した八角形の保育室
は、四角形に比べ隅が多い分、他者との間合いが取り易く、また、輪を形成し
易い特徴があります。当然部屋での集団行動が辛くなる子も現れます。そんな
子は、廊下に逃げますが、高さ70センチのオープンカウンター越しに、体を隠
して目だけで参加したり出来ます。お母さんに抱かれて廊下のソファーで参加
する子もいるでしょう。更に辛い子は、中庭や、屋外歩路まで逃げることも可
能です。ここでは保育室の中の気配は僅かに感じられる程度ですが、本人にと
っては、必死で参加しようと葛藤しているのです。気持ちが休まったら、また
少しずつ中心へと戻ることとなります。                                  
 微妙な見え隠れの状態は、職員にとって決して楽ではありませんが、ぎりぎ
り目の届く範囲で子ども達にとっての逃げ湯を作ることは、発達支援センター
には重要な要素であり、また、発達支援センターとして建築が担う、重要な役
割ではないかと考えます。                                              

 第二の特徴は、中庭です。ひかり園に於ける中庭の設置は、多くの問題を解
決する手段となりました。まず、一つの建物の中で、動きの全く異なる障害児
通園事業と重心事業を、利用者の意識上は分離し、運営上は最短の位置関係と
することを可能にしました。中庭を中心に全体をC型に配置し、その両端に障
害児通園事業、重心事業の各エリアを配置することで、各事業の通園者にとっ
ては自然に距離を置く位置関係なり、職員にとっては、中庭を介して目線がか
ろうじて通り、いざと言うときは、最短距離で連携仕合える位置関係になって
います。                                                              
 また、計画敷地は、東西に間口が狭く、南北に極端に深い形状のため、中庭
の設置は、北側まで十分な自然光を提供することにも貢献し、また、開放的な
印象も与えるています。設計条件でも、延床面積を500u未満に抑える必要
がありましたが、居室とフラットに連続する木製デッキの設置するにより、延
床面積に参入せずに、居室空間を実質的に広げることを実現しました。      
 木製デッキは、夏場のプール遊びも想定して、水の処理にも充分配慮してい
ますので、子供たちは、思う存分、わんぱくに、中庭を堪能することと想像し
ています。また、中庭の南西角には中木に対応した植栽コーナーを設け、夏場
の直射日光を和らげることも想定していますので、体温調節の苦手な重心の利
用者も安心して日光浴を楽しむことと想像しています。                    
 中庭への各部屋からの開放度についても、注意を払った点です。重心事業エ
リアと食堂は、積極的に中庭に開放し一体となる様配慮しながら、同時に、お
互いの窓位置や軸をずらし、目線が合わない様にも配慮しています。障害児通
園事業エリアは、中庭への開放をやや絞り、意識の中心を保育室に向けさせる
演出をしています。                                                    

 第三の特徴は、軒先を低く抑え、傾斜天井も高さを程々に押さえた落ち着き
のある立体空間としている点です。障害児通園事業エリアは、身長1メートル
以下の幼児の利用を、重心事業エリアは、車椅子やストレッチャー使用者の利
用を基本としていますので、その目線を空間の基本としています。腰壁は通常
よりやや低い70センチとし、軒先は2.1メートルとしています。露出させ
た挟み梁や登り梁は、大スパン空間でありながら家庭的なヒューマンスケール
となるよう配慮していますが、全体としては、狭さ、低さを感じさせ無いよう
注意を払いました。低く抑えた階高は、季節、時間を問わず、中庭に十分な採
光を提供することにも貢献しています。                                  

 第四の特徴として、木造のバリアフリー化の試みが挙げられます。狭い敷地
の中で、スロープを確保することはロスが大きいところですが、木造は、基礎
の上に木製の土台を設置する関係上、土台を腐らせない為に、地面から充分な
高さを確保する必要があり、1階のフロアーレベル(床の高さ)を下げること
は、一般的に難しいいとされています。                                  
 今回の計画敷地は、間口が狭く、スロープを設置する充分なスペースを確保
することが困難なことに加え、敷地中央の地表近くに、地下水の水みちがあり
通常より湿気が強い上、更に、毎年の台風時には、集中豪雨となる、バリアフ
リー化には大変条件の悪い条件が重なりましたが、その解決策として、建物全
体を耐圧盤のベタ基礎とし、且つ、外周の地盤面の擦り付けに合わせて、コン
クリートの立ち上がりを段階的に調整して設けることにより、1階の床は、耐
圧盤上端から25センチ、平均地盤面から約35センチとすることを可能にし
ました。外観上は、外部地面と1階床面は、フラットに床が繋がっています。
 また、耐圧盤の採用は、都城市一帯の白州大地の特徴でもある、支持地盤が
存在しない上、不同沈下の危険も有る、冬湯には激しい底冷えとなる等の問題
も、同時に解決することとなりました。                                  

 最後に、シックスクール対策を万全なものとするため、天然素材のみを採用
していることが大きな特徴となっています。建物の基本構成は、大きく「構造」
と「仕上げ」に分けられますが、今回は、その根本から再検証することとなり
ました。                                          
 まず「構造」に於いては、伝統工法と最新工法のハイブリット型と言える工
法を採用してます。大断面を必要とする梁部分には、木製のダボを用い、三段
に重ねるなどの手法を用いています。近年、大断面木材の高騰により、安易に
集成材を用いる傾向がありますが、有機系接着剤であるボンドを多用している
集成材は、人体に対する影響に於いても、長期的な強度面に於いても問題を抱
えており、ダボ止め重ね梁工法は、今後更に注目される工法と考えられます。
 また、柱間には、木チップをコンクリートで固めた高圧木毛板という板状の
補強材を組み込んでいます。高圧木毛板は、まだ使用実績は少ない材料ですが
筋交いに比べ、局部的な力の集中が無く、木製の筋交いを用いる工法に比べ、
地震に対する建物全体の安定性が、数段良い特徴があります。また、材料の中
に有機溶剤や飛散物資が含まれない為、人体に対する悪影響が無いという特徴
も持っています。単に構造補強機能だけではなく、断熱、吸音、吸湿材として
も機能する為、人体への直接的な影響や、廃棄物としての問題が懸念される、
グラスウールや発砲ウレタンを使用しない工法として、総合的な見地から、使
用を試みました。                                                      
 「仕上げ」についても、構造材同様、有機系溶剤(トルエンやボンド)を使
用しない、防腐材など人体に直接悪影響を及ぼす材料を使用しない、再生不可
能な材料(プラスチックなど)使用しないこと、地場の素材を活用することを
徹底しました。                                     
 内外装の壁仕上げには、都城特産の白州を使用した左官材料を用い、床や腰
壁、白洲左官壁以外の壁には、都城特産の杉の無垢材、又は檜の無垢板を使用
しました。                                    

 尚、上記のように、自然素材をふんだんに使用した計画にも拘わらず、坪単
価53万円、建設費総額を8,054万円に抑えられたことは、一つには、構
造設計を担当した、椛搏c建築構造事務所による、他に例を見ない木造伝統仕
口における立体構造解析による木構造材寸法の適正化、スリム化が、コスト削
減を可能にした要素の一つと考えられますが、それにも増して、ひかり園建設
の主旨に賛同し、多大なる便宜を図って下さった、高野建設の力に負うとこ
ろが、何よりも大きいと考えております。最後にこの場を借りて改めてお礼を
申し上げるところです。ありがとうございました。また、複雑な形状、高度な
要求にも拘わらず、高い技術力をもって完成に導いてくださった、高野俊三専
務、菅松幸博現場所長率いる、若き高野建設潟Xタッフにも、改めて敬意を表
したいと存じます。                             
                 ( 泣iカオアーキオフィス中尾耕二
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 Last up date:2012.05.21